わたしが死ぬ時はみんなで最高にハッピーな葬式をしてほしい。
これから生きていく人のために涙の材料になってあげるのは、わたしという人間の最後の使い方としてはあんまり良いことのようには思えない。だって、それで幸せになる人がいますか?
少なくともわたしは、死ぬことは悲しいことじゃないと思っている。ただの結末で、ようやく打てたピリオドだ。物語をひとつ完結させるということはとても難しいことなんです。だからとても大変な大仕事を終えた、それだけの達成の日です。
たったひとつの選択が自死だったのかもしれないあの子に、わたしはまだ一度も涙を手向けていない。
その代わりにわたしの人生は、生きていくための選択肢をたったひとつでも増やせるものにしようと思っている。道無き道を行くのだって立派な人生だ。辛く孤独で寂しいかもしれないけれど、息をしていたくて息をし続けることに、誰も文句なんか言いやしないよ。
ただ息をしているから生きているという、死ぬ気力もないだけの、何の意味もない夜と朝をなんども繰り返しているきみへ。
わたしはいまだに、あの窓辺から見る明け方の空の景色が頭の中にぐるぐるまわる。
あんなに静かで美しいのに、感じる温度は牢獄のように無機質で冷たい。あんなに安全な場所だったのに、怖くて怖くて、何もない自分だけでよく泣いていた。
生きていて。きっと、かならず、誰かときみは出逢うから。
信じていて。無為の世界に身をおきながら、ただただ、かすかな光の前兆を見逃さないでいて。
きみはきみの人生のピリオドを打つ瞬間まできみを生きていくし、わたしはわたしの人生にピリオドを打つ瞬間までわたしを生きていく。そうするしかない。残念な話だけれど、交換はたぶんできない。
誰かがいつかわたしのことを思い出してくれるのなら、わたしの存在よりもずっと、かすかな愛みたいなものを覚えていてほしい。
愛しているよ。世界のことも、きみのことも。
愛しているよ、ぜんぶ。大丈夫。